がんとともに生きる
肺がん
肺がんとは?
肺がんは、気管支・肺胞の一部の細胞が何らかの原因でがん化したものです。進行すると、がん細胞が周りの組織を破壊しながら増殖します。
ひっそりと進行し、自覚症状が出たときにはすでに手遅れということも少なくないがんです。また、進行するにつれて現れる症状は、咳・痰・発熱など、風邪でも起こるようなものであり、「風邪が長引いて…」と受診したら、がんが見つかるというケースもあります。ほかに呼吸困難・体重減少・胸や背中の痛みといった症状が出ることがあります。
肺がんは組織型により、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つに大きく分けられ、非小細胞がんはさらに「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」に分けられています。原因として代表的なものが「喫煙」で、特に扁平上皮がんや小細胞がんはほとんどが喫煙者です。
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また、肺には多くの血管とリンパ管が集まっているため、肺にできたがんが血液やリンパ液の流れに沿って、高率に全身に転移しやすいのが特徴です。小さい段階でも起こります。リンパ節・脳・骨・副腎・肝臓などに転移し、命を脅かします。
肺がん検診
日本人の死因第1位である「がん」のなかでも、最も死亡比率の高いがんとなっている「肺がん」。健診などで早期に発見されれば治療を受けて完治することも十分に可能ですが、自覚症状が出るほど病期が進んでしまってからの受診だと状況は厳しくなります。定期的なチェックがとても大切です。最も基本的な検査は、企業や市町村が行う健康診断に含まれている「胸部X線(レントゲン)検査」。まずは1年に1回、健診を受けましょう。
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当科を受診し、肺がんと診断された方の受診理由
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治療を開始したときの病期
肺がんの診断
健康診断で胸のカゲを指摘された場合、上記の症状が長引く場合などは受診してください。
胸部レントゲンで要精密検査を指摘された方の場合には、まずCT検査を行います。そのうえで肺がんが疑われれば、1泊2日の入院で気管支鏡検査を行い、病変の組織を実際に採取してがん細胞がないか確認します。
組織採取量が多く必要な場合は、通常の鉗子生検ではなく、クライオバイオプシー(凍結生検)を行います。これらの検査でも診断がつかないときは、CTガイド下生検や胸腔鏡下手術による組織採取を行い、診断をつけることもあります。
肺がんと確定した場合は、肺がんの広がりや転移の有無についてPET-CTや脳のMRI検査などで全身を調べます。
当院では、MRI検査(当院にて可能)、PET-CT検査(連携施設に紹介)を含め確定診断までの一連の検査を迅速に行えることが特徴で、一日も早く治療に進んでいただけるよう配慮しています。
肺がんの治療
原則として日本肺癌学会作成の「肺癌診療ガイドライン」に準拠して行っています。
外科療法(手術)・放射線療法・薬物療法(抗がん剤治療)があります。組織型や肺がんの広がりや転移の状況、患者さまの状態などに応じて適切な治療法を決定します。場合によってはいくつかの治療を組み合わせることもあります。当院では、呼吸器外科医、放射線治療医と連携し、迅速に適切な療法を施行することが可能です。
非小細胞肺がんの中心となる治療は手術です。病期(がんの進行の程度)によっては再発予防のため手術後の薬物療法が勧められています。また全身状態・年齢・合併する他の病気などにより、手術が難しいと判断した場合は放射線療法を行います。さらに進行した状態では、薬物療法を中心に行います。
一方、小細胞肺がんは手術が可能な早期に発見されることは少なく、中心となる治療は薬物療法です。放射線療法を併用することもあります。
薬物療法(抗がん剤治療)には、細胞障害性抗がん剤・分子標的治療薬・免疫チェックポイント阻害剤があります。細胞障害性抗がん剤は、細胞増殖を制御しているDNAに作用したり、がん細胞の分裂を阻害したりすることで、がん細胞の増殖を抑える薬です。分子標的治療薬は、がんの増殖に関わっている分子を標的にしてその働きを阻害する薬です。免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞が免疫にブレーキをかける場所(免疫チェックポイント)で、ブレーキをかけられないように阻害する薬です。
当院の特色
肺がんを疑ってから3週間以内に診断をつけ、治療に移行できることを目標にしています。 呼吸器内科・呼吸器外科・放射線治療科など複数科が連携・協力し集学的な医療が可能です。