がんとともに生きる

骨髄異形成症候群

骨髄異形成症候群とは?

骨髄異形成症候群(MDS:myelodysplastic syndromes)は、3種類の血液細胞(赤血球、血小板、白血球)の大もとになる造血幹細胞に異常が起こった病気です。
赤血球、血小板、白血球がそれぞれ成熟する3系統の過程に同時に異常が発生する場合だけでなく、まずそれぞれの過程に異常が生じて、次第に3系統へと進行していく場合もあります。1つの病気ではなく、複数の似たような病気の集まりと捉えられているため、症候群(syndromes)と呼ばれます。
異常な造血幹細胞からつくられた血液細胞には、機能の異常や、顕微鏡で観察したときの形の異常(異形成)が認められます。その異常のために、血液細胞の分化の過程で未熟な細胞のままで止まってしまったり、一応成熟したようにみえても無効造血(細胞が壊れる)などが生じて、血液の中を流れる血液細胞が減ってしまったりします。そのため、骨髄異形成症候群では、まず血液検査で貧血(赤血球の減少)や血小板の減少、白血球数の異常(減少や増加)などの血液細胞数の異常が指摘されます。
また、骨髄異形成症候群が進行すると、急性骨髄性白血病に移行することがあります。

症状

骨髄異形成症候群では、血液細胞が減少し、正常に働かなくなるためにさまざまな症状があらわれますが、無症状のまま、健康診断の血液検査で血球減少などの異常により見つかる場合も多くあります。
症状のあらわれ方は、患者様によって異なります。具体的には、赤血球減少による顔色不良、全身倦怠感、動悸、息切れなどの症状や、血小板減少による皮膚・粘膜の点状出血や鼻出血などの症状があります。白血球の1つである好中球の減少や機能低下により感染症にかかりやすくなり、発熱などを伴うことがあります。

原因

ほとんどの場合、原因は不明です。
骨髄の細胞の染色体を調べると、約50%に染色体異常がみられますが、これは先天的なものではなく、人に遺伝したり感染したりすることはありません。
ただし、骨髄異形成症候群の中には、「治療関連骨髄異形成症候群(MDS)」と呼ばれるものがあり、これは過去に他のがんに対して細胞障害性抗がん剤の治療や放射線治療を受けた数年後に、いわば治療の副作用として発症します。こうしたことから、何らかの原因によって血液をつくる細胞に遺伝子の異常が生じ、これが発症に関与すると考えられています。

疫学・統計

骨髄異形成症候群はあらゆる年齢層に認められますが、主に中・高齢者に多い疾患とされています。高齢化の影響もあり、発症数は次第に増加傾向にあるといわれています。

診断

診断のための検査

骨髄異形成症候群の診断は、血液検査で末梢(まっしょう)血に血球の減少と形態異常がみられること、骨髄検査で血球の異形成(形態の異常)が認められることで確定されます。
再生不良性貧血などのような、血球が減少する他の疾患・病態と見分けることが重要となりますが、骨髄検査で鑑別できます。
その他、血液や骨髄中の芽球(がきゅう:未熟な血液細胞)の割合が20%を超えると、急性白血病と診断されます。
骨髄異形成症候群の診断と治療方針を決定するためには、以下のような検査が行われます。

血液検査

白血球、赤血球、血小板の数、血液細胞の形態異常の有無、未熟な血液細胞である芽球の有無を調べます。肝臓、腎臓などの機能の確認も併せて行います。

骨髄検査(骨髄穿刺、骨髄生検)

病型(病気の種類)を決定するために必ず行う検査です。骨髄穿刺は骨髄骨の中の骨髄血を採取し、骨髄生検では骨髄組織を採取します。採取した骨髄血・組織を顕微鏡で観察し、細胞の数や種類、形態異常の有無、芽球の割合などを調べるとともに、染色体の異常についても調べます。

病型分類

診断が確定したのちは、芽球の割合、染色体異常や造血細胞の異形成(形態の異常)の程度などの特徴に応じて分類し、病型を見極めます。芽球の割合が高いほど、急性白血病へ移行するリスクが高いとされています。病型の分け方には、従来は1982年に提唱されたFAB分類が使われてきましたが、現在は、2008年にFAB分類を改訂したWHO分類が一般的に用いられています。

治療

リスク群分類と治療方針の決定

予後(病状の経過)予測のための重要な指標の1つに、1997年に提唱された「国際予後予測スコアリングシステム(IPSS:International Prognostic Scoring System)」があります。これは、予後に深く関連すると考えられる骨髄での芽球の割合、染色体異常の状態、血球減少の状態を点数化し、その合計スコアによって、リスクを「Low」「Intermediate(Int)-1」「Intermediate(Int)-2」「High」の4群に分類するものです。
IPSSにおける「Low」および「Intermediate(Int)-1」に該当する患者さまを「低リスク群」に、「Intermediate(Int)-2」と「High」に該当する患者さまを「高リスク群」とし、当てはまるリスク群と、年齢や体の状態などを総合的に検討して、治療方針を決定します。

リスク群別の治療方針

治療方針はリスク群や年齢などを総合的に考えて決められます。低リスク群においては、血球減少への対応が第一の目標となります。高リスク群では、白血病に進行する可能性が高いことから、より積極的な治療方針がとられます。

低リスク群では血球の減少が軽度で自覚症状のない場合には経過観察となりますが、血球の減少が進行する場合には、血球減少への対応とその改善が治療の第一の目標となります。
血球減少に対する治療としては、輸血などの支持療法(がんの症状や副作用を軽減するための予防策や治療法)、正常造血の回復を図るための免疫抑制療法や、貧血を改善するためのサイトカイン療法などが行われます。5番染色体長腕(5q)の欠失(染色体の一部が欠けていること)を伴う5q-症候群の患者さまで、赤血球輸血をたびたび繰り返す場合には、抗造血器悪性腫瘍剤のレナリドミドの有効性が認められています。

高リスク群では急性骨髄性白血病に転化するリスクが高いことから、より積極的な治療方針がとられます。現在のところ、治癒が期待できる治療は同種造血幹細胞移植のみとなります。
移植を行わない場合には、細胞障害性抗がん剤のアザシチジン(AZA)が第一選択薬と位置付けられています。
5q-症候群の患者さまでは、抗造血器悪性腫瘍剤のレナリドミドを使用することもできます。一部の患者さまには、急性白血病の治療に準じた化学療法が選択されることがあります。

当院の特色

当院は日本血液学会により認定された「日本血液学会認定血液研修施設」であり、血液疾患に関しエビデンス(この治療法がよいといえる根拠)と経験に基づく診療・教育を行っています。
骨髄異形成症候群の方の疾患に対する診断、治療や療養等に関するあらゆる診療場面に対応をしています。
アザシチジン療法、免疫抑制療法、レナリドミド、サイトカイン療法等の治療を行っています。

ページトップに戻る