がんとともに生きる

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫とは?

悪性リンパ腫とは血液がん(造血器腫瘍)の1つで、白血球の中のリンパ球ががん化したものです。リンパ球には、B細胞、T細胞、NK細胞などの種類があり、これらががん化して無制限に増殖することで発症します。
悪性リンパ腫が発生する部位は、リンパ系組織とリンパ外臓器(節外臓器)の2つに大きく分けられます。リンパ系組織は、細菌やウイルスなどの病原体を排除する機能がある免疫システムの一部で、リンパ節をつなぐリンパ管やその中を流れるリンパ液、胸腺、脾臓、扁桃などの組織や臓器です。リンパ外臓器(節外臓器)は、胃、腸管、甲状腺、骨髄、肺、肝臓、皮膚などです。リンパ系の組織や臓器は全身にあるため、悪性リンパ腫は全身の部位で発生する可能性があります。

症状

首やわきの下、足の付け根などリンパ節の多いところに、通常は痛みのないしこりとしてあらわれ、数週から数カ月かけ持続的に増大して縮小しません。
病期が進むと、このしこりや腫れは全身に広がり、進行するにしたがって全身的な症状(発熱、体重の減少、顕著な寝汗など)がみられるようになります。
また腫瘤により気道や血管、脊髄などの臓器が圧迫されると、気道閉塞、血流障害、麻痺などの症状があらわれ、緊急で治療が必要な場合もあります。

原因

原因はまだ明らかではありませんが、細胞内の染色体の異常によって、染色体中のがん遺伝子が活性化し、その結果、リンパ系細胞ががん化して発症すると考えられています。また、一部にはウイルス感染症が関係することや、免疫不全者に多いことがわかっています。

分類

がん細胞の形態や性質によって30種類以上に細かく分類されていますが、大きくはホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つに分けられます。
発症の多くは非ホジキンリンパ腫で、ホジキンリンパ腫はわが国では少なく、悪性リンパ腫の全体のうち約5~10%程度です。この分類は治療方針を決定するうえで重要な情報であるため、病変部から組織を採取して生検を行い、どの種類の悪性リンパ腫か正確に病理診断することがとても重要です。

疫学・統計

新規罹患患者数は、2005年の調査では16,991人、罹患率は人口10万人あたり約13人と年々増加傾向にあります。男女比は約3:2と男性に多く、60~70歳代が発症のピークとなっています。

悪性リンパ腫の検査

病理検査

悪性リンパ腫の診断と病型分類を決定するために最も重要な検査で、リンパ節生検や腫瘍生検を行います。 麻酔を行い、しこりのあるリンパ節あるいは腫瘍の一部を切り取り、顕微鏡で観察します。このとき切り取られた組織の一部は、染色体検査や遺伝子検査にも使われることがあります。

病期(病気の広がり)や全身状態を調べる検査

進行するにしたがって腫瘤や腫瘍が全身に広がっていきます。どの程度病気が広がっているのか、また治療が可能な全身状態か正確に診断するために以下の検査を行います。

血液検査、尿検査

全身状態を知るために、血液検査や尿検査が行われます。血液検査では、主に肝臓や腎臓の機能をみて、これからの治療に耐えられる状態か、どのような副作用に注意が必要かなどを判断します。ウイルス感染が悪性リンパ腫の原因となる場合もあり、治療に伴う合併症も起こりやすくなるため、B型肝炎ウイルスなどのウイルス感染の有無を調べます。病気の勢いを示す指標である、血清LDH、CRP、可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R)などを調べます。

画像検査

胸部X線検査、超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査、PET検査(陽電子放出断層撮影法)。

骨髄検査

がん細胞が骨髄の中まで浸潤していると疑われる場合に行います。腰や胸の骨に針を刺して骨髄液を吸引する骨髄穿刺、少量の組織を採取する骨髄生検で、骨髄中の細胞や組織の検査を行います。

消化管内視鏡検査

MALTリンパ腫やマントル細胞リンパ腫など、消化管に病変があることが疑われる場合に行います。

脳脊髄液検査

リンパ腫が脳や脊髄に広がっていると疑われる場合などで、腰椎の間に細い針を刺して脳脊髄液を採取する検査です。

悪性リンパ腫の治療

病期による治療の選択

悪性リンパ腫ではI期、II期、III期、IV期の4つに分けられています。進行の程度によって治療法や今後の病状が変わってくるため、検査結果等を用いて病期を正確に把握することがとても重要です。
悪性リンパ腫の治療は、化学療法と放射線治療を中心に行います。治療効果が十分でない場合は、さらに強い化学療法や、適応がある場合は造血幹細胞移植などが行われます。治療法は、病型や病期と全身状態を考慮して決定されます。

化学療法(抗がん剤治療)

悪性リンパ腫に対する中心的な治療法は化学療法です。抗がん剤を注射や点滴または内服することにより、がん細胞を消滅させたり小さくしたりすることを目的として行います。抗がん剤にはたくさんの種類があり、悪性リンパ腫の病型によって通常4~5種類の抗がん剤を組み合わせる多剤併用療法が行われます。入院や外来治療で、通常3~4週間を1コースとし、数コース行います。

多くの場合大量の抗がん剤を投与するため、開始当日から治療後数カ月にわたり、さまざまな副作用が起こりますが、予測される副作用に対して、可能な限り対策を立てて治療を行います。一般的な副作用は、骨髄抑制(骨髄の働きの低下)や吐き気、嘔吐、下痢、口内炎、脱毛、発熱などです。

分子標的治療

分子標的薬はがん細胞の増殖に関わる分子だけを標的とした薬剤で、従来の抗がん剤と組み合わせて点滴や内服で投与します。
代表的な分子標的薬はリツキシマブで、B細胞の表面にある「CD20」という分子を標的とした薬剤です。CD20は細胞の活性や増殖に関わり、がんになったB細胞に多くあらわれています。リツキシマブはこのCD20を働かないようにさせて、がん細胞が増殖できないようにします。CD20はB細胞の表面だけに出現するため、「CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫」の治療に使用されます。
最近の新しい分子標的薬として、イブリツモマブ チウキセタンやブレンツキシマブベドチン、モガムリズマブ、ボリノスタットなどがあり、主に再発した場合に使用可能となっています。
分子標的薬は、従来の抗がん剤とは異なる副作用があり、リツキシマブの場合インフュージョンリアクションという投与して間もなくアレルギー症状のような副作用が起こる場合があります。また肺障害や心臓障害にも注意が必要です。

放射線治療

放射線治療は、高エネルギーのX線を体の外から照射し、がん細胞を破壊し損傷させて、がんを消滅させたり小さくしたりする効果があります。病巣が1つで小さい場合(I期)や早期のリンパ腫(I期または隣接するII期)などに単独で行ったり、短期間の化学療法と併用して行ったりすることがあります。
放射線治療の副作用は、主に放射線が照射された部位に起こる皮膚炎、粘膜炎などや、全身症状としてはだるさ、吐き気、嘔吐、食欲低下、白血球減少などがあり、個人によって程度が異なります。症状が強い場合は、症状を和らげる治療をしますが、通常は治療後2~4週くらいで改善します。

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植とは、大量の化学療法や全身への放射線治療などを行った後に、骨髄機能を回復させるため事前に採取した造血幹細胞投与する治療です。標準的な化学療法や放射線治療を行っても再発する可能性が高い場合などに行われます。

経過観察

ゆっくりと進行する病型の悪性リンパ腫の場合、何年間も症状がない状態で経過することがあります。このような場合は治療を行う利点がないこともあり、定期的な診察を継続し、病期が進んだり何らかの症状が出たりした時点から治療を行います。

治療効果の判定

治療効果を判定するためには、通常CT検査を行います。PET検査も有効なため積極的に行われています。
リンパ節の腫瘤は、がん細胞が消失しても形が残ることがあるため、治療前のPET検査で異常があったものが治療後消失していれば、形態上やCT検査での腫瘍の大きさに関わらず、完全奏効(がん細胞が認められなくなる)と判断されます。

当院の特色

当院は日本血液学会により認定された「日本血液学会認定血液研修施設」であり、血液疾患に関してエビデン(この治療法がよいといえる根拠)と経験に基づく診療・教育を行っています。
悪性リンパ腫の方の疾患に対する診断、治療や療養などに関するあらゆる診療場面に対応をしています。
リツキシマブ、モガリズマブをはじめとした抗体療法の適用や、メソトレキセート大量療法などの化学療法、放射線照射療法と化学療法の併用療法などを行っています。

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