がんとともに生きる
前立腺がん
前立腺がんとは?
前立腺は男性だけにあり、精液の一部をつくっている臓器です(図1)。前立腺は、恥骨(骨盤を形成する骨の1つ)の裏側に位置しており、栗の実のような形をしています。正常な前立腺は円錐形を呈し、主に移行域と呼ばれる内腺部と辺縁域と呼ばれる外腺部からなります。良性の前立腺肥大症は移行域から、がんの多く(約70%)は周辺域から発生します(図2)。
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図1 前立腺
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図2 前立腺がんの発症域
前立腺がんの症状
早期の前立腺がんには特徴的な症状はみられません。しかし、同時に存在することの多い前立腺肥大症による症状、例えば尿が出にくい、尿の切れが悪い、排尿後すっきりしない、夜間にトイレに立つ回数が多い、我慢ができずに尿を漏らしてしまうなどがみられる場合があります。
前立腺がんが進行すると、上記のような排尿の症状に加えて、血尿や骨への転移による腰痛などがみられることがあります。腰痛などで骨の検査を受け、前立腺がんが発見されることもあります。 最近は症状がなくても、検診や人間ドックなどの血液検査で前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)高値を指摘されて、泌尿器科へ二次検診目的で受診される方が急増しています。
前立腺がんの診断
血中PSA(前立腺特異抗原)測定
腫瘍マーカーとして、現在、最も有用なものの一つです。
少量の血液を検査するだけの簡便な方法です。確定的ではありませんが、PSAは前立腺がんのスクリーニング(がんの可能性の有無を判定)、診断はもちろん、がんの進行度の推定、治療効果の判定、再発の診断、そしてその後の経過の予測にも役立ちます。
MRI
局在診断、局所進行病期の診断に有用で、PSAなどで強く前立腺がんが疑われる場合に行います。
生検後出血による診断能低下を避けるために、通常生検前に行いますが、生検にてがんと確定診断された場合にも、手術適応、術式を決定するうえで有用です。
超音波下前立腺針生検
確定診断のためには前立腺の組織の一部を採取し、がん細胞の存在を病理学的に証明することが必要です。
経直腸エコー(超音波検査)で前立腺を観察しながら、組織を採取します。通常、多部位生検といって10本以上の組織を採取するため1泊2日入院で行っています。
前立腺がんの治療
外科療法(ロボット支援下体腔鏡下前立腺全摘除術)
体腔鏡下に前立腺を精嚢と共に摘除し、膀胱と尿道をつなぐ手術です。
局所療法ですから、適応は転移のないステージAとB、それにCの一部の方です。
当院では体腔鏡下(ダヴィンチ手術)に行っております。入院期間は10日間程度です。
放射線療法
当院では、放射線治療装置「トゥルービーム」を用いた高精度な放射線治療(IMRT)を行っています。詳しくは放射線治療科のページをご覧ください。
内分泌療法
前立腺がんは内分泌療法(ホルモン療法)に対する感受性が高いので、術前や放射線療法との併用、高齢者や転移のあるステージDの治療法となります。が適応となります。
経過観察
なんら治療せずに厳重に経過観察のみを行う方法で、症状のない高齢の方の場合に適応があります。
前立腺がんは、加齢とともに多くなるがんの代表です。前立腺がんの中には、進行がゆっくりで、寿命に影響しないと考えられるがんもあります。がんではない、ほかの原因で死亡した男性の前立腺を調べた結果、がんであったことが確認されることがあります。このように、生前、検査や診察などで前立腺がんが見つからず、死後の解剖により初めて確認されるがんを、「ラテントがん」といいます。
これに対し、悪性度の高いがんは時間の経過とともに進行し、検査や診察などで発見されるようになります。
治療法にはそれぞれ副作用が必ず伴いますから、現在の生活の質を大切にしたい場合、がんが微少で病理学的悪性度が低い場合、症状のない超高齢者の場合などが適応となります。
多くは3~6カ月毎のPSA採血による経過観察が中心です。病状の進行が心配される場合には治療を開始します。
化学療法と新規治療薬
転移のある進行がんが新たに見つかった場合には、抗がん剤や新規内分泌治療薬等による集学的治療が推奨されています。
当院の特色
当科では前立腺がんの診断・治療に重点的に取り組んでおり、前立腺生検から化学療法、放射線療法、手術まで当院で行うことができます。ライフスタイルに合わせた治療選択のお手伝いをさせていただきます。