がんとともに生きる

腎盂・尿管がん

腎盂・尿管がんとは?

腎盂・尿管がんは、図のように腎実質で作られ排出された尿が最初に流れこむ腎盂と、それを集めて膀胱に運ぶ尿管に発生するがんで、上部尿路がんとも呼びます。細かく見てみると、膀胱と同様に内側から粘膜(移行上皮)、粘膜下層、筋層に分けることができます。がんはこの一番内側の粘膜から発生します。

比較的まれな疾患で、頻度は膀胱がんの約1/20にすぎません。腎盂がんは尿管がんよりやや多く、尿管がんは尿管の下1/3(下部尿管)に多いといわれています。膀胱がんと同じく、男女比は2~4:1と男性に多くで、高齢になるほど発生頻度は高くなり、50~70歳代に多く発病します。 腎盂・尿管がんも、膀胱がんと同様に、尿中発がん物質との接触が発がんの引き金となると考えられています。したがって、喫煙、染料、化学薬品、鎮痛剤(フェナセチン)、慢性炎症(尿路結石などによる)、抗がん剤(シクロホスファミド)などが発がんの危険因子です。

腎盂・尿管がんの症状

  1. 肉眼的血尿:膀胱がんと同様、初発症状としては多くが肉眼的血尿で発見されます。
  2. 水腎症:また、がんの進行・増大やその部位からの出血による血液の固まりが原因で尿管が閉塞した場合、尿が閉塞部位より下流に流れなくなり、上流の腎盂・尿管の拡張がおこります。いわゆる水腎症と呼ばれる状態が急に起こるため、がんのある側の腰背部痛や側腹部痛を伴うこともあります。
  3. 健康診断:近年は、無症状でも検診の普及により、顕微鏡的血尿、腎機能障害、超音波検査などで異常を指摘され、精密検査を受けた結果、腎盂・尿管がんが発見される症例もあります。

腎盂・尿管がんの診断

腹部超音波

侵襲の少ない簡便な検査で、血尿のスクリーニングとして施行します。 腎盂内の腫瘍の有無や、水腎症の有無、リンパ節や肝への転移の有無などがわかります。

逆行性腎盂造影

罹患側の腎機能が低下しているため上記の静脈性尿路造影検査で尿路が造影されないときなどに行います。 逆行性に尿道、膀胱を経て尿管内に細いカテーテルを挿入し、直接造影剤を注入して病変を画像に写し出す方法です。 同時に腎盂や尿管の尿を選択的に採取し、細胞診検査に提出することができます。

腎盂尿管鏡

最近、細い軟性の内視鏡器具が開発されました。内視鏡で腎盂尿管を観察することで、直接腫瘍を発見することが可能で、その腫瘍組織を少量採取(生検)してがんの病理学的診断が可能です。

CT、MRI

がんの浸潤程度、転移の有無などを検索するのに有用です。 造影検査で腫瘍は軽度の造影効果を示します。尿管結石や腎がんとの鑑別にも有用です。

尿細胞診

尿中にはがれおちてきた細胞を色素で染めて、がん細胞の有無を調べる方法です。 がんの悪性度が高くなるほど陽性率が高くなりますが、逆に悪性度の低いがんでは陽性とならないこと(誤陰性)も少なくありません。

腫瘍マーカー

腎盂尿管がんにおいては、前立腺がんにおけるPSAのような、早期発見に有用な血中腫瘍マーカーは今のところありません。したがって、早期発見のためには、定期的に(年1回程度)尿検査を行い、血尿などの異常を指摘されたら泌尿器科専門医の診察を受けることが重要です。

腎盂・尿管がんの治療

腎尿管全摘除術

転移が無い場合、患側の腎・尿管および尿管開口部周囲の膀胱壁を合併切除します。尿路がんの多発性を考慮した最も標準的な治療法です。ほぼ腹腔鏡下手術で行われます。 対側腎機能が正常であれば、術後の食事や運動の制約は特にありません。また、転移が無くても、根治切除が困難であると判断される筋層浸潤がんの場合、抗がん剤による化学療法を施行した後、手術を行うことがあります。 逆に、手術後、病理検査の結果にて再発の危険性が高いと判断される場合(壁外浸潤やリンパ節転移が確認された方)は、術後に化学療法を施行することもあります。また内視鏡手術にて完全切除が困難な膀胱がんの合併がある場合は、膀胱全摘除および尿路変向術も必要となることがあります。

腎機能保存的手術療法

一つしかない腎臓の腎盂や尿管にがんが発生した場合、両側にがんが発生した場合、あるいは悪性度の低い表在性単発腫瘍の場合などでは、内視鏡的手術や尿管部分切除などによる腎保存手術を試みることがあります。

化学療法・免疫療法

診断時に既に転移が確認された方では、初回治療として化学療法を行い、その効果をみて手術療法や放射線療法を追加します。ここで使用する抗がん剤は、膀胱がんで使用する化学療法と同様の薬剤を使用します。

放射線療法

尿路上皮がんの放射線治療は第一選択ではありませんが、効果的な場合もあります。年齢や合併症などにより局所治療としての根治手術が難しい方では、放射線治療が選択されることもあります。

再発の診断と治療

がん細胞が粘膜層にとどまっている表在がんの治療成績は良好ですが、膀胱内に再発しやすいという特徴があります。
一方、浸潤がんであった場合は、局所への再発のみならず、リンパ管や血管を介してリンパ節転移・遠隔転移を生じやすく、その後の病状の見通しは良くありません。定期的な膀胱鏡検査による膀胱内観察に加えて、CT・レントゲン検査などによる局所再発や転移の検索を行います。
膀胱内再発の場合、多くは内視鏡手術で治療可能です。一方、リンパ節や他の臓器に転移するかたちで再発した場合、化学療法を行い、その効果をみて手術療法や放射線療法を追加します。

当院の特色

腹腔鏡下手術から放射線療法、化学療法まで当院で一貫して行うことが可能です。

 

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