がんとともに生きる
精巣がん
精巣がんとは?
精巣がんは精巣内の精子を造る精細管上皮細胞から発生します。
精巣は、男性の股間の陰のう内部にある卵形をした臓器です。左右に1つずつあって、睾丸(こうがん)とも呼ばれています。精巣は精子を造る男性固有の臓器です。精子を造るだけではなく、男性ホルモンも造っています。
精巣腫瘍にかかる割合は10万人に1人程度とされ、比較的まれな腫瘍です。しかし、他の多くのがんと異なり、20歳代後半から30歳代にかけて発症のピークがあり、若年者に多い腫瘍であることが大きな特徴となります。実際に20歳代から30歳代の男性では、最もかかる数が多い固形腫瘍(白血病などの血液腫瘍以外の腫瘍)とされています。
病気の原因は不明ですが、停留精巣の患者様では、精巣固定術施行の有無に関わらず一般男性に比べ3~14倍のリスクを有します、片側の精巣がん患者が、反対側に精巣がんを発生する頻度は同じく20倍以上とされています。その他に、外傷や炎症もがん発生の一因とされています。
精巣がんは、細胞の種類によって大きくセミノーマと非セミノーマに分けられます。後者の方が転移を起こしやすく、より悪性の経過をとります。
精巣がんの症状
精巣のしこりや、腫れが初発症状です。しかし、多くの場合痛みや発熱がないため、かなり進行しないと気付かないことも少なくありません。
およそ30~40%で下腹部の重圧感や鈍痛があり、10%で急性の精巣痛があります。がんが進行し広い範囲に転移が出現すると、腹痛や呼吸困難、首のリンパ節の腫れ、体重減少、腫瘍の産生するホルモンの影響で乳首の痛みや腫れなどもおこります。
発病しやすい年代の方は、入浴時に自分で触ってみる自己検診をお勧めします。
精巣がんの診断
触診
ずしりとした重みのある精巣を触れます。反体側の正常な精巣と比較し、精巣上体ではなく精巣そのものにしこりや腫れがあることを確認します。
超音波検査
陰嚢内に水がたまっていて精巣そのものが触れにくい場合、精巣の腫瘍が小さい場合などにとても有効な検査です。
CT、MRI
がんの浸潤程度や質的診断、転移の有無などを検索するのに有用です。
血液検査
LDH(乳酸脱水素酵素)、AFP(アルファ胎児性蛋白)、hCG(ヒト縦毛性ゴナドトロピン)などの腫瘍マーカーがあり、診断や治療の助けとなります。
組織検査
精巣がんでは、前立腺がんのように手術前に組織検査をして診断を確定することは、転移を生じる恐れがあるため禁忌です。
精巣がんの治療
精巣がんと診断がついたら、まず高位精巣摘除術を行います。
高位精巣摘除術とは、陰のうではなく足の付け根の鼠径部を切開し、精巣に向かう血管をまず縛って、がん細胞が手術操作によって散らばらないようにしてから、精巣、精巣上体、精索を一塊として摘出します。 精巣摘出後の治療法は、病期によって異なります。
再発の診断と治療
病期 I(転移のない場合)
無治療経過観察(サーベイランス)
およそ80%の患者さまが、無治療で経過観察をしていても再発しません。しかし、5年程度は指示された間隔でしっかりと腫瘍マーカーや、CT、超音波検査のチェックが必要です。特に2年以内は頻繁な検査が必要です。 再発しても早期発見であれば、抗がん剤の治療を2~3カ月かけて行うことによりほぼ完治可能です。
予防照射
精巣がんの組織型がセミノーマであった場合、転移好発部位の後腹膜に放射線治療をする方法です。
95%程度の非再発率が見込めますが、80%の患者さまに不必要な治療をすることになる点、少ないながら放射線の副作用もある点、再発した時点での治療開始でもほぼ救命可能である点などから、最近はサーベイランス(経過観察)が選択される場合が多いです。
病期 II(転移のある場合)
放射線治療
セミノーマの病期・Aに選択されることがあります。90%程度の治癒率です。
化学療法±残存腫瘍切除
抗がん剤治療を3~4コース行い、腫瘍マーカーの陰性化を待って、残存腫瘍があればこれを摘出します。セミノーマの場合には、3cm以下の残存腫瘍ならば経過観察でも良いとされています。摘出した残存腫瘍に、生きているがん細胞が認められた場合には、抗がん剤治療を2コース追加します。 腫瘍マーカーが陰性化しない場合には、救済化学療法として、別の抗がん剤や、超大量化学療法などが試みられています。
当院の特色
手術、化学療法の導入は当院で行っております。超大量化学療法が必要な場合には名古屋市立大学病院と共同して治療にあたっております。