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121名の新入職者を迎えて

入社式を執り行いました

桜が満開となった新年度初日。
少しひんやりとした薄曇りの空は、混沌とした社会へ旅立つ者たちに、覚悟を決めよと告げているようでした。

社会医療法人宏潤会理事長・宇野雄祐は、入社式の式辞で問いかけます。
「何かを得るために、別の何かを捨てる“トレードオフ”という概念があるが、これからの時代には、この“トレードオフ”を乗り越え、両方と向き合うことが必要なのではないだろうか」と。

 
新型コロナウイルスに襲われて3年目。
今年も入社式はリアルとZOOMのハイブリッドで行われました。

マンボウが明け、リアル側の舞台は3年ぶりに講堂に移りました。
迎える側もスキルを蓄え、ビデオカメラ4台と、十数台のPCを駆使して、講堂に集った30名、ZOOMカメラの向こうの91名の計121名の新入職者、そして院内各部署を繋ぎます。

理事長・病院長をはじめとする経営陣、副院長、そしてリモートでサテライトクリニックの院長らが、一言ずつ祝辞を述べたのち、リアル・ZOOM参加含めた新入職者全員の名が呼ばれました。
その歯切れの良い返事から、たとえZOOM越しであっても、熱気が伝わります。

理事長が式辞を述べ(全文を下記に掲載)、
新入職者を代表して研修医の小倉葵が、答辞を訓みました。
落ち着いた透明感のある声に込められた入社式への感謝と、新しい世界へ向かうまっすぐな気持ちが、参加した全員の心に沁みわたりました。

ヒストリーからストーリーへ

入社式の後は早速、新入職者研修初日。
理事長講話から始まり、宏潤会のミッション、ビジョン、バリューについて語られました。

私たちはここで何をするのか、なぜここにいるのか、という存在意義について問いかけが始まります。
医療者はそのキャリアにおいて、ずっと自らにこの問いを続けるべきなのです。

病を持つ人に、この人にできることは何だろう?
その人は、この世に一人しかいないのだから

大同病院の成り立ちにも埋め込まれた
高度急性期医療の推進と地域包括ケアの拡充という使命、この両輪をもって、最高の包括ケアネットワークを確立しようというビジョンが私たちにはあります。

きょう仲間に加わった皆さんと、いまいる職員全員が、手を携えて、患者さんや地域のひとたちのためにおこなう医療・ケアこそ、あらたなる歴史を織りなす、物語となることでしょう。

理事長が先導します。

患者さんと地域のいく先を照らし続けよう
人々を不安から自由にするために

理事長 式辞

社会医療法人宏潤会に入社された皆さん、誠におめでとうございます。
121名の方々を、当法人にお迎えすることができて、嬉しく思います。

皆さんの多くの方は、今日、医療の世界に入ってこられました。
いよいよ、自立した人生のスタートになります。
期待で胸が一杯だと思います。
また、すでに医療の世界でご経験があり、私たちと共に仕事をしたいと入社された皆さん、
ありがとうございます。

私たち宏潤会は、遥か昔から、医療と介護の実践を通して社会に貢献してきました。
その誕生は、遠く1939年に遡ります。

この長い歴史の間には、幾多の戦乱や災害など、困難や危機に直面したことがありました。
しかし、その苦しい時代を担った職員が、懸命にバトンを受け継ぎ、乗り越えてきたと伺っています。

最近はどうでしょうか?
11年前には東日本大震災、6年前に熊本地震、3年前に北海道胆振東部地震、
2年前からコロナパンデミック、そして今ウクライナ侵略を目の当たりにしています。
私たちは、自然災害と感染症パンデミック、そして戦争の時代を生きています。

どんな時も、人間というのは、同時に複数のことを乗り超えることで、
新しい価値を創り、時代を生き抜いてきました。
トレードオフという言葉があります。何かを得るために、何か別の物を捨てる。
今という時代は、別のものを捨てるのではなく、常にトレードオフを乗り越える覚悟が必要だと感じます。
私たち医療者も、一方の何かと、もう一方の何か、
その両方に向き合わなければならない。そう思います。

例えば、新型コロナウイルス感染症がそうです。
2019年12月に中国武漢市で感染患者が報告されました。
名古屋市では2020年1月に初めての患者が発生しました。
3月11日にはWHOがパンデミック宣言をしました。

そして2年経過しました。
未だ収束の兆しはありません。
今後も新型コロナウイルス感染症と共存する時期が続くと想定されます。
コロナの波は、まだ度々訪れるでしょう。
しかしコロナ以外の従来の一般患者も多くいらっしゃいます。
中には高度な医療を必要とする患者もいます。
新型コロナウイルス感染症に注力して、一般患者の治療を制限しますか?
それとも一般患者の治療に専念して、コロナの治療を他の病院に任せますか?
宏潤会、大同病院には、このトレードオフは存在しません。両方の患者を診ています。
地域には、両方の患者がいるからです。

ウクライナ危機もそうです。
ご承知のようにロシアの侵攻によって、ウクライナの国土は荒廃しています。
多くのウクライナ市民や子供たちが傷つき、亡くなり、逃げ惑う悲惨な状況となっています。
私たちと同じ、病院までもが無差別に攻撃されています。
皆さんも働き始めると分かります。
一人ひとりの患者を助けるために、私たち医療者がどれほどの力と心を尽くしているか、ということが。
目を離すと消えてしまいそうな命の燈に、懸命に治療を施すことで日々が過ぎていきます。
一方で同じ地球上で、戦乱によって、いとも簡単に抵抗なく奪われていく多くの命があります。
どちらからも目を逸らすわけにはいかない。
医療・介護の分野で働いている私たちは、2つの命の意味に向き合う必要があります。

そして日本の医療もそうです。
どんなに社会が変わろうとも、命を助ける急性期医療がなくなることはありません。
私たちは、人の誕生から死に至る全ての場面で、命を救うための挑戦を続けています。
一方で、退院する患者は、命の危機を脱したとしても、
決して皆さんお元気になっているわけではありません。
住み慣れた我が家で健やかに過ごすためには、さらに時間と支援が必要です。
全ての患者が速やかに急性期治療を終え、その後の療養を「ずっと安心して」続けられるような、地域包括ケアシステムが必要です。
私たち宏潤会は、高度急性期医療を追求し、かつ地域の包括ケアネットワークをより良くしていく、この2つを同時に実現し、トレードオフを乗り越えようとしています。

いつの時代でも、どんなことも、
トレードオフを乗り越えて初めて、高い価値、より良い仕組みを獲得することができます。
私たちが乗り越えた先には、新しい地域医療があるはず。

こんなタフな時代を生き抜くために、
私から皆さんに、3つの言葉を贈りたいと思います。

1つめは、「使命感」です。
医療者としての、専門家としての使命感を持ってほしい。
使命とは、命を使うと書きます。
医療者として、どう自分の命を使い切るのか?
これから何十年の社会人生活で、社会に向けてどんな価値を発揮しますか?
生涯をかけて、自らへ問い続けてください。

2つめは「倫理観」です。
高い倫理観を持ってください。
倫理観は、正しいものとそうでないものを区別する基準です。
何かに迷ったときには、正しいと考えた方を、必ず選ぶ。
患者は、不安にみちて病院に来られます。
患者に対して、「おもてなしの心」をもって接してください。
「おもてなしの心」とは、「その人の行く先をあたたかく照らす心」です。
ある治療が始まるときに、この治療によってどのようなことが起こり得るのか?
患者は何を不安に感じるのか?に想いをめぐらせ、ともに治療に向かう。
患者から「実は心配なのです」と打ち明けられてから対応するのではなく、先に準備する私たちの姿勢がおもてなしであり、患者の「本当の安心」につながると考えています。
高い倫理観がなければ、患者のための準備はできません。

3つめは、「挑戦」です。
これから様々な事に挑んでください。
皆さんの選ばれた仕事は、一生をかけて挑戦する価値があります。
人のために尽くす。人のためになる。
そのために、医療の世界に入ってこられたはずです。

宏潤会も「挑戦」を続けています。
宏潤会は、いつでも誰に対しても、
病のため、命の危機があるとき、直ちに、質の高い医療を受けてもらえることを目指しています。
どんなに社会が変わろうとも、命を助ける医療がなくなることはありません。
私たちは、人の誕生から死に至る全ての場面で、命を救うための挑戦を続けています。

桜は満開です。
皆さんを迎えた桜の花は、一輪でも美しいと感じます。
さらに多くの花が寄り添うと、桜たちは力を合わせて咲き誇ります。
皆さんがチームとして努力することで、輝く病院、医療法人になると信じています。

皆さんは、素晴らしい道を歩み始めました。
「この道を誠実に真摯に進む限り、正しい道である」
今後も自信を持って、一緒に歩み続けてもらいたいと願います。

一人ひとりが夢に向かって挑戦し、宏潤会がさらに大きく発展していくことを期待して
私からのお祝いの言葉とさせていただきます。

2022年4月1日
社会医療法人宏潤会理事長 宇野雄祐

  • 入社式を終えて、外へ出ると空は青く晴れ渡っていた。

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